V.S. AKB48

俺はアイドルを好きにならない。
グラビアやポスターを見て可愛いな―、美人だなーって思うことはあるけど。
その反面、女優は簡単に好きになる。フォーリンラブ。
そういう意味だと映画とかドラマに出たアイドルは好きになったりするんだけども。
理由は簡単。アイドルはパーソナリティが見えてこないからだ。


女優を知る場合、映画やドラマを通しての場合が多い。
その場合、まずはその女優が演じてるキャラクターを好きになる。そこではそのキャラクターのパーソナリティが描かれているから。(俺は感情移入しやすいタチなのだ)
そうするとそのキャラクターの向こう側に見えてくる女優さんそのもののパーソナリティが気になってくる。
さらにその映画自体を気に入るとインタビューとか読んだりするので女優さんのパーソナリティが見えてきて・・・惚れる。
そんなパターンが多い。

でもアイドルはそうはいかない。
まず、もう8年もテレビを持っていないのでバラエティとかでアイドルのパーソナリティを伺い知ることができない。
アイドルソングは聴かないし、そもそも歌詞を書くアイドルも少ないし・・・もちろんライブに行く機会もないのでパーソナリティの知りようがない。
もし知りたければこちらからまず一歩踏み込まなければならない。

そんなわけでアイドルファンになったことはない。
Perfumeきゃりーぱみゅぱみゅについてはいつか語らねば・・・)
基本的に無関心だ。
ただ、たまに漫画雑誌のグラビアとか見て、
「こんな水着や下着みたいな服で写真撮られてるってことは男の股間に訴えかけて金儲けしてるって意識、本人たちにはあるのかな・・・」って思うことはある。
その辺の意識から積極的に目をそらしてカマトトぶるくらいならAV女優の方がよっぽど気持ちいいよな・・・2つの意味でな!


・・・ゴ、ゴホン。まぁ、俺のアイドル感はそんな感じ。
ちなみにAKB48についても同様に基本的なスタンスは無関心。

名前と顔が一致する人は2,3人くらい。
以前、アイドルについて考察したときにPVは一通り見た。
感想としては、んー。
フライングゲット』と『上からマリコ』のPVの陳腐さには開いた口が閉まらなかった。
曲のクオリティとしてはなんとも。最近のヒット曲はある程度の完成度はあるもののなんだかアイドルソングぜんとし過ぎてて面白味に欠ける。
言わばストレートで平均的かつ王道なアイドルソング。もうちょい独自の色やコンセプトを押し出してくれてた方がいいと思う。
国民的アイドルであるが故であり、国民的アイドルたる故ではるんでしょうが。
そういう意味では『RIVER』はカッコよかったし、『チームB推し』は曲としてもAKBとしても構造的に面白い曲だったので気に入ったり。
ちなみに少し前の曲についてはクオリティ自体が・・・・


そんな俺が観てきました。
『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』
うん、タイトルが長くてうるせー。

で、結論から。
もう、号泣だよ!畜生!!
感動しまくったよ!!メンバーに惚れたよ!!
AKB48メンバー全員に最大限の賛辞と尊敬を。
AKB48を取り巻く大人たちには憤怒と軽蔑を。
とくに秋元!てめぇはしね!できるだけ苦しんでしね!!



まず、冒頭。映画は震災の被災地への慰問ライブから始まる。
ここではメンバー内唯一の被災者である岩田さんにスポットを当てつつ慰問ライブの様子が映される。
もうね、この時点で俺の涙腺決壊寸前。最近俺の涙腺ぶっ壊れ気味ではあるんだけど。
だってさ、小中学生がチョー喜んでるの。で、喜んでる子供達みて大人達も喜んでるの。
国民的アイドルがすぐそこで歌って踊ってくれてるの見ればそりゃ喜ぶよ。
あんな風にサインしてくれたり写真撮ってくれたりされたらそりゃ喜ぶよ。

この時点で彼女達の存在は完全に肯定されたというか。
これは国民的アイドルである彼女達にしかできないわけじゃないですか。
家でゴロゴロしながらAKBは不細工だテレビ局のゴリ押しだってネットに描き込んでる連中の500億倍くらい人の役に立ってるわけじゃないですか。
これを見てどうして彼女達を否定できようか。


シーン変わって、総選挙。
俺は寡聞にしてよく知らなかったんですが、AKBって年に一回選挙で順位を決めるんですね。

・・・・阿呆か!!!

10代20代の女の子、しかも同じグループ内で人気順位付けする!?
残酷にもほどがあるだろう!!
そこにドラマが生まれないはずがないだろう!!面白くないわけないだろう!!!
でも残酷過ぎる!非道すぎる!!正気の沙汰じゃない!!!」

ここは映画としての撮り方が巧くて、予備知識が全然ない俺でもなんとなくバックグラウンドが見えてくる。
ああ、このコは前回いい順位だったのに今回落ちちゃったんだ、とか。
もちろん、白眉は前田さんと大島さんの1位争い。今回、見事1位に返り咲いた前田さんのシーンだけでもうなんか、限界。
1位から2位へ転落してしまってからの1年間は想像に易く、同時に想像を絶します。
というか、他のメンバーにしたって、明確すぎる順位ってものを背負って過ごした1年間って・・・・

そしてとんでもないのは舞台裏。
気丈に振る舞っていた大島さんが篠田さんの顔を見た途端に号泣。
それを受けて篠田さんも目を濡らす。
でも、次のシーンでは笑顔の大島さんが前田さんと抱き合う・・・その後ろで暗い顔をした板野さん・・・・

ぎゃー!!残酷過ぎる!!なんじゃこりゃ!!
こんな糞みたいに厳しい現実を10代20代の女の子に突きつけるの!?
意味わからん!!こんなん間違ってるだろ!法律で禁止しろ!!
でも・・・・おもしろ過ぎる。

板野さんのインタビューでの言葉が心に突き刺さる。
「辛いことには慣れてますから」


続いて西部ドームのライブシーン。
このシーンは高橋さんオンステージ。まじかっけぇ。まじ男前。

1日目のライブが大失敗に終わり、秋元康に「今まで見たなかで最低」と言われてしまう。
その後高橋さんがみんなに喝を入れ、2日目に向けて必死のリハーサルを重ねるメンバー・・・しかし、過酷な練習の末、バタバタと倒れだしてしまう。
そしてとうとう、センターの前田さんまでも過呼吸で・・・
急遽前田さん抜きのパターンを練習し、不安を抱えたまま、円陣を組んでいると・・・・前田登場!!!

ってなんじゃこりゃ!でき過ぎだろ!?
これはもう戦争映画だよ!!
バタバタと倒れていく兵士達・・・戦地へ赴くその顔は暗い・・・しかし!負傷していたアイツが隊に帰ってきた!!

それで、一曲目が『RIVER』でしょ。
この曲、ちょっと軍隊歌っぽい雰囲気あるんだよね。マイケルの『They Don't Care About Us』を彷彿とさせるような。
もう・・・完璧か。

ライブ後半、フライングゲット
ぶっ倒れる寸前の前田さんがセンターの曲。
なんとか舞台に立つものの、声がでない。MCができない・・・
そこからの展開といったら!!
周りのメンバー、なにより高橋さんの対応の仕方!!!ここについては是非観て確認してほしい。
そして、照明が一回落ちてから、曲のイントロがかかり・・・照明ON!その瞬間の前田さんの顔!!!!

ぎゃー!!!!!!!!!(驚愕と感動で腰を抜かす俺


なんとか予定のプログラムは終わらせるもの、最後の曲が終わった時点でみんなぶっ倒れる寸前。
無理をおしていた前田さんは本当に倒れてしまう。
動けないメンバー達。
しかし、客性からは大歓声。

「アンコール!!アンコール!!!!!!」

アンコールって、こんなに残酷な言葉だったとは・・・
だって、もう死ぬ寸前の女の子に対して、もっと歌えもっと踊れって言ってるんだぜ・・・

こんなの絶対健全じゃないし、間違ってるし、正しくないし、残酷だし・・・でも、観客のコールだって、好きが故だし・・・ああ!もう!!でもやっぱ間違ってる!!ってやきもきしてると、さらにとんでもない展開が。

MCで繋げばいいですか?行けます。
って言ってステージに飛び出す高橋さん。
そして叫ぶ「走れーーーーーー!!!!」

ぎゃー!!!!!!!!!(驚愕と感動で腰を抜かす俺

そのボロボロの体で走るの!?もう・・・なんか・・・
それはまるで「てめぇなんか勝手にごちゃごちゃ悩んでるけど、余計なお世話だ馬鹿野郎!私達は好きでやってんだよ」って言われているようで。
それはまるで『レスラー』のラストシーンでコーナーポストに登るランディのようで。
それはまるで『ハートロッカー』で再び戦地へ赴くウィリアムのようで。

なんだか感動と同時に彼女らをとりまく大人達に憎悪すら抱いてしまい、最終的にはそれを本人に否定されるという・・・すげぇ体験をしてしまいました。


続いてのシーンはチーム4という新たに結成されたAKB内のチームの物語。
チームのキャプテンは島田さんであろうという周囲の予想に反して大場さんに決まる。
しかし、大場さんは過去の彼氏とのプリクラ写真流出によって、謹慎。島田さんが代行キャプテンとなる。
しばらくして謹慎がとけて大場さんがチームに戻ってきて・・・

島田さんとしては多少不本意な形だろうけど、念願のキャプテン。
しかし、大場さんが戻ってくることによってキャプテンは下ろされてしまう。
大場さんには戻ってきて欲しいけどキャプテンは譲りたくない・・・

他のメンバーとしてもチームの評判を落とし、大いに迷惑をかけた大場さんが帰ってくることに対して不穏な雰囲気が漂う。

なんじゃこりゃ!!!残酷過ぎる!!!でもおもしろ過ぎる!!!
そして、結果としてアイドルの恋愛問題というその踏み込むか?って場所に片足をつっこむことになる。
・・・なんつー映画だ。

ただ、その問題についてはあくまで片足をまでに止めている。
が、他の問題に対して踏み込みすぎているんですが・・・



最後。もう一度慰問ライブシーンで終わる。
一連の流れを見ているの冒頭の慰問ライブとはまるで見え方が違ってくる。
彼女たちの笑顔には、そして観客に笑顔を与えるに至るには、それまでにとんでもない努力と苦痛が重ねられていたのだ。

もう、号泣。
涙と鼻水で顔中がぐちゃぐちゃ。


AKB48メンバー全員に最大限の賛辞と尊敬を。
ファンを含むAKB48を取り巻く大人たちには憤怒と軽蔑を。

『少女達は傷つきながら夢を見る』って傷つけてるのはお前ら大人だろ!!
主催者達だろ!!ファン達だろ!!!

でも、そんな俺みたいな外側からの怒りは高橋さんの「走れ!」一言で否定されちゃってるし・・・
やっぱり、俺はこれ以上アイドルってものには踏み込まないようにしよう。そう思うには十分過ぎる作品でした。

今後もCDやグッズ買ったり、ライブ行ったりはしないだろう。
積極的に名前覚えたりはしないだろう。
でも、安易に底が浅いAKB批判をするやつは俺が揺るさん!!ってくらいには思い入れてしまいました。




最後に。
この映画があえて踏み込んでいない部分について(と言いつつも片足くらいは突っ込んでたけど)

まず、商業的な面。
俗にAKB商法と言われてるアレ。
握手券や選挙券、そのたグッズを手に入れるために大量に同じものを買い込むオタクたち。
これは全く持って健全じゃない。
これははっきりと良くないと断言します。

もう一点。アイドルの恋愛問題。
アイドルっていう性質上、架空恋人としての需要は無視できない。
だからこそ水着で写真を撮る。
そうなってくるとやっぱり恋愛禁止はつきものだ。
でもさ・・・彼女らだって人間じゃねーの?
アイドルや芸能人であるまえに10代20代の女の子だろ?
アイドルの恋愛に怒るっていうのは昭和のアイドルに付きまとった「アイドルはトイレ行かない」にみたいな気持ち悪さがある。

人間なんだから怒ったり辛かったり苦しかったりする。
人間なんだからトイレ行くし、人を好きになるだろうし、セックスだってするだろう。
いいじゃん。認めてやれば。
テメーがファンになった相手の恋愛なんだから祝福してやりゃーいいじゃん。
CD割ったり写真破いたり悪質な書き込みしたり・・・くだらない。
って、この問題は受け取り側の問題な気もするけど。



ただ、この2点に踏み込んだときってのはアイドル、というかエンターテイメントの1つの到着点であり終焉であろうと思う。
なんだか怖いけど、ここまでの映画が作られたってことはその日は近い気がしている。




ああ!今回、全然まとまってない!!そして語り足りない!!
言いたいことの1/10も語れてなーーーーい!!!