【映画の感想】最近観た映画色々

映画館、レンタル諸々含め、最近観た映画の短評。

『愛と誠』
前半の超絶説明的馬鹿ミュージカル演出はかなり好き!!いき過ぎるとそれはもう面白くなるって一例だと思う。
ただ、後半になるとミュージカルシーンはほとんどなくなってただの変なテンションの青春劇になちゃって・・・

『フライペーパー』
想像した以上のことが起こらない。
あと、登場人物の行動が阿呆過ぎて、観ていてなんかもうどうでもいいやってなってしまう。

『演劇1』『演劇2』
大傑作!感想はまとめるのまだ無理。
演劇だけじゃなく、音楽とか映画とかいわゆる芸術ってなんで人が生きる上で必要なのかってのがよくわかる。
合わせて5時間以上あるけど、絶対観る価値ある。
鑑賞後、監督にお会いして「あのシーンをああやって構築するってことはこういう意図ですよね?すごく考えさせられました!」って言ったら「あー、特になにか考えてそうしたわけじゃないな。おっもしろい解釈するねー!」ってすげぇ肩すかしくらったのも良い思い出。

パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』
感情移入する対象が誰一人としていないし、そこまで面白い見せ場もないので物語がどう進んでもどうでもいいやって感じ。
いや、あった!見せ場あった!上裸の美女水着軍団が登場したシーンは最高でしたな!!乳頭を必死で守る髪の毛がひたすら邪魔でしたが・・・

トロール・ハンター
トロールのフォルムが意外とファンタジックで面白かった。
ツッコミどころにわざわざ自分達で言及していく展開には笑わせられた。
モキュメンタリーにありがちなカメラ置いて逃げろよ問題はこの作品にも。

逆転裁判
ギミック類が楽しかったし、それらを表現するCGがかなり頑張ってて良かった。
ただ、展開が酷かったかな。法廷劇なのに論理が破綻しまくってるし、テンポが速過ぎるし・・・

黄金を抱いて翔べ
日本でこういうレベルのケイパーものって他にあるかなーってくらい面白かった。
金庫破りの計画が粗いのも面白かった。劇中で「綿密なのと細かいのは違う」って台詞出てきたし。それにしたって行き当たりばったり過ぎかなー・・・。
超綿密に計画して策と技術と道具を駆使しまくる系ケイパー物が好物な俺にはちょっとだけ合わなかったかな。

のぼうの城
テレビ映画もやればできるじゃん!!って興奮した!!
とにかく画がダイナミックでかっこいい!樋口監督の貢献度がでかいかな。
脚本も2時間にしっかりまとまってる印象。
約2名ほど演技テンションが現代な人がいらしゃったのが・・・言動や台詞回しも2人だけ現代っぽいんだよな・・・
あと、姫様の演技力が・・・

『ももへの手紙』
不快。
妖怪達の設定がテキトー過ぎるし、あいつら役立たずどころか邪魔しかしてないし・・・
イライラする展開が続いて観てるの辛かった。

ラム・ダイアリー
登場人物の行動が全部理解不能
アンバー・ハードがエロくて最高でした。
ゴンゾについて全然知識なかったから楽しめなかったのかなぁ・・・

【映画の感想】『ザ・レイド』

なにこれ、超おもしれええええ!!!
結論から言っちゃえばアクション映画の歴史に残る傑作でした。
インドネシア恐るべし。

冒頭、装甲車の中。19人の特殊部隊。
隊長が言う「これから魔窟に攻め込むぞ。今日こそ麻薬王リヤディを逮捕するんだ。やつのアジトとしてる30階建のビルの住人全員が悪だ。なかでも危ないのはリヤディの側近2人で、頭脳派と肉体派の2人だ」

んで、いい面構えの3人が画面に映る。
一目で誰がボスで誰が頭脳派で誰が肉体派なのかわかる、素晴らしい面構え。

んで、あとはひたすらアクションシーン。
台詞もほとんどなくなる。
とにっかくものすごいアクションシーンの連続。
どれだけすごいかって言葉じゃ説明不可能だから、とりあえず観て。
今まで観たすべてのアクションよりも凄いって言い切っても過言じゃないレベルのアクション観れます。

役者さんたちの動きがすご過ぎるのは当然、建物の構造を利用したアクションの数々やほどよい抑制の効いた緊張感ある演出・・とにかくどこをとっても最高に面白い。

主人公のラマや特殊部隊の隊長ジャカ、鉈を持った中ボス級のギャングなどとにかくいい面構えの男達が、まぁかっこいい・・・んだけど、なによりも誰よりもかっこいのはマッドドッグ!!
とにかくとにかくとにかくカッコいいいいいい!!!
マッドドッグ師匠の勇姿を劇場で観ないてはないって!!

いや、でも、ホント、絶対に歴史に残る映画になるのは確実!
それを公開時に劇場で観たってのはすごく価値のあることなので、是非観るべきだと思います。

まぁ、難点をあげるなら終盤のラスボスとのグダグダした台詞のやりとりだけは頂けなかったかなぁ・・・なんて、そんなことはどうでもいいくらい面白かったのでよし。

【映画の感想】一人ホラー映画祭

『貞子3D』という映画を観てしまいまして。
最近買った3Dテレビのテストをしてみたかったとか、色々な言い訳があるんですが、とにかく観てしまったのは事実でして。

これがまぁ大方の予想通りの駄作でして。
それのせいで変なスイッチが入ってしまい、どうしても良質なホラーを観ないと気が済まない!!ってことで休日を丸一日使い、真っ暗な部屋の中で独りホラー映画を観まくるという超充実した一日を過ごしたので感想を。

あと、最近、俺の国語力的な部分がだいぶ衰えた感じがあるので、観たり読んだり聞いたりしたことの感想はなるべく言葉にしてみようと思い立ったわけです。

呪怨
ジャパニーズホラーの金字塔と言っても過言ではないでしょう。
リング以降のジャパニーズホラーブームの頂点とも言える作品。
確かに怖かったんだけど、数回目の鑑賞のためかじっくり観察していましい、やや演出や効果としての粗に気付いてしまったためにどうしても心から怖がることができなかった。
やはり、一度キャラクター化してしまうとどうしても怖がることができない。
なので、この作品をまだ観てない人が羨ましい。
もし、記憶を消せる装置があるなら、映画への情熱はそのままにすべての映画の記憶を消してもらうのもいいなーって思った、そんな余談。

携帯彼氏
つまらなそうな映画を借りてきて、やっぱつまらなかった!って怒るという、誰も得しない行為をとるという癖がありまして。その一環として今回のホラー映画祭にラインナップしたのがこちら。
俺が毛嫌いしているケータイ小説原作物です。
結論から言ってしまうと、思ってたほど悪くなかった。ある意味肩すかし。
日常に恐怖が忍び寄ってくる演出とかちゃんとされてたし、ゲーム内の会話のディティールとかそれっぽかったし。
中高生向けってことで血や露出は少なめ。登場人物たちはやけに脚出してるなーくらいでした。
そのわりに「レイプ」って言葉は多用されてたりしてその辺の基準はよくわからない。
あと、女子高生がプログラムで悪霊と戦うってプロットは好き。
なんか、褒めてる感じになちゃったけど、決定的につまらないことは確か。けど、怒るほどではないというか・・・

『携帯彼女』
つまらなそうな映画を借りてきて、やっぱつまらなかった!って怒るという、誰も(以下略
上記作品の続編。
こっちは完膚無きまでに駄作。ホントにつまらなかった。
登場人物は全員狂人。なんでそういう行動するのか全然理解できない。共感できない。
やけに説明台詞が多いのもイライラ。
最後の一番面白いところを全部台詞で説明しちゃったのがなにより最悪。
あそこは演技だけで見せてぞっとさせてくれないと・・・
今回観た作品の中で一番演技レベルが低かったのも特徴。

『リング』
もちろん、観たことはあったんだけど、かなり前だったので内容はほぼ失念。
リングの内容覚えてないくせに映画好きとか言ってごめんなさい状態。
そんなわけで新鮮な気持ちで怖がって観れました。・・・中盤までは。
やっぱり、貞子の正体がわかってきた段階で貞子って存在が俺の中で“得体の知れないナニカ”からキャラクターへと変わってしまい、どうしても怖くなくなってしまった。
とかなんとか言ってるけど、映画館で初見だったら相当びびってたんだろうな・・・
ラストのナレーションは不要だと思った。なんなら電話のシーンもいらないと思った。
こっちは漫画だけど、『闇金ウシジマくん』の「スーパータクシーくん」の回のラストみたいな、あんな感じだったらなぁ。
あと、これはBD版を観たんだけど、画質の向上のマイナス面を見た気がする。幽霊があんまり鮮明過ぎると怖くなくなっちゃう。

『降霊』
待ってました!黒沢清監督作品!!すっげぇ怖かった。
この監督は不穏な空気を作らせたら世界一だ。画面構成だけですっげ不穏感出してくる上にBGMの使い方がやたら怖いから・・・・
平凡な日常に地味ぃにでも確実に不穏なナニカが迫ってくる描写がほんっとにキツい。観てて辛い。
台詞に頼らず描写で説明する手腕も見事。
この作品はやけに画質が粗い。引きの画になると人物の表情が判別できないくらい粗い。でも、それが恐怖を倍増させてる。
とくに少女の霊が登場したときなんてその効果がすごくよく出てる。全体的に画面が乾いたような色合いで、日本の夏っぽさが良く出てるのもいい。
先に観たBD版の『リング』と比較させてホラー映画における画質について考える良い機会にもなった。
ちなみに黒沢清監督の“不穏な感じ”はドラマ『贖罪』ってとんでもないことになってるので必見。

『回路』
黒沢清監督二本目。
すっげぇ怖かった。一番怖かった。中盤までは。
前半の怖さったらない。色々怖いところあったけど、直接的な描写で一番怖かったのは、やっぱりあのソファ越しのアイツでしょう!!なに、あの動き!!すげぇ怖い。
冒頭の首吊り死体も負けてない気持ち悪さでしたが。。。。
あと、この世からいなくなった(あえてのこの表現)の人達が残す“跡”も不気味で良かった。
相変わらずの「日常を恐怖が少しずつ浸食していく描写」が秀逸。
ただ、後半、事態がどんどんでかくなっていき、現実味がなくなってしまい、いまいち怖くなくなってしまう。あの状況、ちょっと楽しそうなんだもん。
あと、黒沢清にしてはやけに説明っぽい台詞が多いなーって気がした。
過去作も近作もそんなことないのに、これだけやけに説明っぽいんだよなぁ。うーん。
DVD特典としてメイキングがついてたんだけど、監督がどういう意図で幽霊を演出してるかがわかって、それがなにより面白かったかも。


というわけで独りホラー映画祭でした。
是非是非怖い映画があったら教えてくださいな。

【映画の感想】『桐島、部活やめるってよ』

大・傑・作!!
間違いなく今年の日本を代表する作品であり、『キッズリターン』のように今後青春映画の名作として語り継がれるであろう大傑作。
こんな下らない文章読んでる暇あったら千円札2枚握りしめて映画館へ走るべき。

ちなみに色んな種類の感動し過ぎて、感想を文章にできるほど消化しきれてません。
好きな所を羅列するだけならできるけどそれだと終わらなくなってしまうし・・・


とりあえずBDは購入決定。
少しでも興味ある人は観るべきだと思いますよ。
んで、観るつもりならなるべく情報は仕入れずに観に行くといいと思いますよ。

【アニメの感想】『あの夏で待ってる』

全くもってノれなかった・・・・

舞台が俺の故郷ってことで母校やら町並みやらとにかく懐かしい背景がでてくるのはすげぇ嬉しくなってしまった。
しかし、完全のストーリーが全然だめ。
物語としては青春物でSFで恋愛物なんだけど、それぞれで重要となる要素が完全にスポイルされてしまっている。

まず、青春物としての刹那性、残酷性が決定的に欠如してる。
学校における青春ってのは卒業っていうリミットが否応なく迫ってくることによって刹那性が生まれて、そこにドラマが生まれるんだけど、そのリミットがイマイチ明示されてない。
このメンバーで過ごすことができる夏は今年だけだけで、もうこの夏は2度と戻らないって意識させないからドラマが生まれない。緊張感や焦燥感がない。
映画についてもリミットや目標がないからただなんとなくボンヤリしてて、作品の完成の是非とかどうでもいい感じ。
後半になるとイチカが帰らないといけないというリミットが出てくるんだけど、それもなんだか曖昧でピンとこない。これは後のSF性の話にも通じる。
更には人間ができてない10代を強制的に同じ空間にぶち込むことによって発生する残酷性みたいなものも描かれない。登場人物が己の利己的な行動を悔いるシーンはあるもののなんとなくのご都合主義で片付いてしまう。
これじゃあ青春物として成り立ってないじゃん・・・
スタンド・バイ・ミー』50回観て勉強しとけと言いたい。

次にSFとしての物語内のリアリティラインがテキトー過ぎる。
もちろん、フィクションなんだから嘘の設定で嘘の話をするわけんだけど、その設定がテキトー過ぎるから話がどう展開しようがどうでもいい気分にしかならない。
そもそも高度文明の宇宙人が辺境の星の土人である地球人と単独で接触(しかも民間人が)時点でどうかと思うけど、救助信号からの展開がとにかく酷い。
救助ポッドが星間戦争起こすレベルですげぇ攻撃的だし、民間人より到着遅いし、てか低度文明との接触に厳しい割に監視とか規制とかグダグダだし、具体的な危険とか懸念とか制限とかなんにもないし・・・
それに宇宙人と地球人の恋愛って・・・大丈夫なの?明らかにセックスを連想させるシーンとかあったけど、構造とか仕組みとか地球人と同じなの?
まぁ、姿形が地球人と同じって時点でその辺についてはなんにも考えてないんだろうけど、異種間交配だぜ?禁忌じゃん。
それを乗り越えるとことにペナルティとドラマが生まれるだろうに・・・完全スルー。
んで、めんどくさい矛盾やら説明不足はご都合主義で片付けられてしまう。
真面目にSFやる気も恋愛物やる気もない。
ギャラクシー・クエスト』と『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』をそれぞれ100回ずつ観て勉強すべきだ。

最後に恋愛物としてキャラクターに魅力がなさ過ぎる。
恋愛物なんだから、どうしてそいつがそいつのことを好きになったかってのは重要なファクターになってくる・・・けど、この話ではキャラに魅力がないからそれが全然わからない。
海人の人物像が全然魅力的に描かれないからイチカやカンナが惚れる理由が全くわからない。
逆もまた然りでイチカはメガネで、グラマラスで、文化の違いからくる天然ボケで、居候で・・・って記号的な萌え要素ばっかりで全然魅力的じゃないから海人がイチカを選ぶ理由が全然わかんない。どちらかと言うと、いつでも一生懸命なカンナの方が魅力的だ。
そんなわけでそんな二人がどうなろうと、どうでもいい。心底どうでもいい。
どうせなら観てる俺らが本気で惚れてしまうくらい魅力的にキャラを描いてくれないと。

その他諸々言いたいことはいっぱいあるけど・・・
基本的に誰がどうなろうとどーでもいいとしか思えないお話でした。


いや、まぁ、絵の描き込みとか好きなところもなくはないんだけどさ。

V.S. AKB48

俺はアイドルを好きにならない。
グラビアやポスターを見て可愛いな―、美人だなーって思うことはあるけど。
その反面、女優は簡単に好きになる。フォーリンラブ。
そういう意味だと映画とかドラマに出たアイドルは好きになったりするんだけども。
理由は簡単。アイドルはパーソナリティが見えてこないからだ。


女優を知る場合、映画やドラマを通しての場合が多い。
その場合、まずはその女優が演じてるキャラクターを好きになる。そこではそのキャラクターのパーソナリティが描かれているから。(俺は感情移入しやすいタチなのだ)
そうするとそのキャラクターの向こう側に見えてくる女優さんそのもののパーソナリティが気になってくる。
さらにその映画自体を気に入るとインタビューとか読んだりするので女優さんのパーソナリティが見えてきて・・・惚れる。
そんなパターンが多い。

でもアイドルはそうはいかない。
まず、もう8年もテレビを持っていないのでバラエティとかでアイドルのパーソナリティを伺い知ることができない。
アイドルソングは聴かないし、そもそも歌詞を書くアイドルも少ないし・・・もちろんライブに行く機会もないのでパーソナリティの知りようがない。
もし知りたければこちらからまず一歩踏み込まなければならない。

そんなわけでアイドルファンになったことはない。
Perfumeきゃりーぱみゅぱみゅについてはいつか語らねば・・・)
基本的に無関心だ。
ただ、たまに漫画雑誌のグラビアとか見て、
「こんな水着や下着みたいな服で写真撮られてるってことは男の股間に訴えかけて金儲けしてるって意識、本人たちにはあるのかな・・・」って思うことはある。
その辺の意識から積極的に目をそらしてカマトトぶるくらいならAV女優の方がよっぽど気持ちいいよな・・・2つの意味でな!


・・・ゴ、ゴホン。まぁ、俺のアイドル感はそんな感じ。
ちなみにAKB48についても同様に基本的なスタンスは無関心。

名前と顔が一致する人は2,3人くらい。
以前、アイドルについて考察したときにPVは一通り見た。
感想としては、んー。
フライングゲット』と『上からマリコ』のPVの陳腐さには開いた口が閉まらなかった。
曲のクオリティとしてはなんとも。最近のヒット曲はある程度の完成度はあるもののなんだかアイドルソングぜんとし過ぎてて面白味に欠ける。
言わばストレートで平均的かつ王道なアイドルソング。もうちょい独自の色やコンセプトを押し出してくれてた方がいいと思う。
国民的アイドルであるが故であり、国民的アイドルたる故ではるんでしょうが。
そういう意味では『RIVER』はカッコよかったし、『チームB推し』は曲としてもAKBとしても構造的に面白い曲だったので気に入ったり。
ちなみに少し前の曲についてはクオリティ自体が・・・・


そんな俺が観てきました。
『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』
うん、タイトルが長くてうるせー。

で、結論から。
もう、号泣だよ!畜生!!
感動しまくったよ!!メンバーに惚れたよ!!
AKB48メンバー全員に最大限の賛辞と尊敬を。
AKB48を取り巻く大人たちには憤怒と軽蔑を。
とくに秋元!てめぇはしね!できるだけ苦しんでしね!!



まず、冒頭。映画は震災の被災地への慰問ライブから始まる。
ここではメンバー内唯一の被災者である岩田さんにスポットを当てつつ慰問ライブの様子が映される。
もうね、この時点で俺の涙腺決壊寸前。最近俺の涙腺ぶっ壊れ気味ではあるんだけど。
だってさ、小中学生がチョー喜んでるの。で、喜んでる子供達みて大人達も喜んでるの。
国民的アイドルがすぐそこで歌って踊ってくれてるの見ればそりゃ喜ぶよ。
あんな風にサインしてくれたり写真撮ってくれたりされたらそりゃ喜ぶよ。

この時点で彼女達の存在は完全に肯定されたというか。
これは国民的アイドルである彼女達にしかできないわけじゃないですか。
家でゴロゴロしながらAKBは不細工だテレビ局のゴリ押しだってネットに描き込んでる連中の500億倍くらい人の役に立ってるわけじゃないですか。
これを見てどうして彼女達を否定できようか。


シーン変わって、総選挙。
俺は寡聞にしてよく知らなかったんですが、AKBって年に一回選挙で順位を決めるんですね。

・・・・阿呆か!!!

10代20代の女の子、しかも同じグループ内で人気順位付けする!?
残酷にもほどがあるだろう!!
そこにドラマが生まれないはずがないだろう!!面白くないわけないだろう!!!
でも残酷過ぎる!非道すぎる!!正気の沙汰じゃない!!!」

ここは映画としての撮り方が巧くて、予備知識が全然ない俺でもなんとなくバックグラウンドが見えてくる。
ああ、このコは前回いい順位だったのに今回落ちちゃったんだ、とか。
もちろん、白眉は前田さんと大島さんの1位争い。今回、見事1位に返り咲いた前田さんのシーンだけでもうなんか、限界。
1位から2位へ転落してしまってからの1年間は想像に易く、同時に想像を絶します。
というか、他のメンバーにしたって、明確すぎる順位ってものを背負って過ごした1年間って・・・・

そしてとんでもないのは舞台裏。
気丈に振る舞っていた大島さんが篠田さんの顔を見た途端に号泣。
それを受けて篠田さんも目を濡らす。
でも、次のシーンでは笑顔の大島さんが前田さんと抱き合う・・・その後ろで暗い顔をした板野さん・・・・

ぎゃー!!残酷過ぎる!!なんじゃこりゃ!!
こんな糞みたいに厳しい現実を10代20代の女の子に突きつけるの!?
意味わからん!!こんなん間違ってるだろ!法律で禁止しろ!!
でも・・・・おもしろ過ぎる。

板野さんのインタビューでの言葉が心に突き刺さる。
「辛いことには慣れてますから」


続いて西部ドームのライブシーン。
このシーンは高橋さんオンステージ。まじかっけぇ。まじ男前。

1日目のライブが大失敗に終わり、秋元康に「今まで見たなかで最低」と言われてしまう。
その後高橋さんがみんなに喝を入れ、2日目に向けて必死のリハーサルを重ねるメンバー・・・しかし、過酷な練習の末、バタバタと倒れだしてしまう。
そしてとうとう、センターの前田さんまでも過呼吸で・・・
急遽前田さん抜きのパターンを練習し、不安を抱えたまま、円陣を組んでいると・・・・前田登場!!!

ってなんじゃこりゃ!でき過ぎだろ!?
これはもう戦争映画だよ!!
バタバタと倒れていく兵士達・・・戦地へ赴くその顔は暗い・・・しかし!負傷していたアイツが隊に帰ってきた!!

それで、一曲目が『RIVER』でしょ。
この曲、ちょっと軍隊歌っぽい雰囲気あるんだよね。マイケルの『They Don't Care About Us』を彷彿とさせるような。
もう・・・完璧か。

ライブ後半、フライングゲット
ぶっ倒れる寸前の前田さんがセンターの曲。
なんとか舞台に立つものの、声がでない。MCができない・・・
そこからの展開といったら!!
周りのメンバー、なにより高橋さんの対応の仕方!!!ここについては是非観て確認してほしい。
そして、照明が一回落ちてから、曲のイントロがかかり・・・照明ON!その瞬間の前田さんの顔!!!!

ぎゃー!!!!!!!!!(驚愕と感動で腰を抜かす俺


なんとか予定のプログラムは終わらせるもの、最後の曲が終わった時点でみんなぶっ倒れる寸前。
無理をおしていた前田さんは本当に倒れてしまう。
動けないメンバー達。
しかし、客性からは大歓声。

「アンコール!!アンコール!!!!!!」

アンコールって、こんなに残酷な言葉だったとは・・・
だって、もう死ぬ寸前の女の子に対して、もっと歌えもっと踊れって言ってるんだぜ・・・

こんなの絶対健全じゃないし、間違ってるし、正しくないし、残酷だし・・・でも、観客のコールだって、好きが故だし・・・ああ!もう!!でもやっぱ間違ってる!!ってやきもきしてると、さらにとんでもない展開が。

MCで繋げばいいですか?行けます。
って言ってステージに飛び出す高橋さん。
そして叫ぶ「走れーーーーーー!!!!」

ぎゃー!!!!!!!!!(驚愕と感動で腰を抜かす俺

そのボロボロの体で走るの!?もう・・・なんか・・・
それはまるで「てめぇなんか勝手にごちゃごちゃ悩んでるけど、余計なお世話だ馬鹿野郎!私達は好きでやってんだよ」って言われているようで。
それはまるで『レスラー』のラストシーンでコーナーポストに登るランディのようで。
それはまるで『ハートロッカー』で再び戦地へ赴くウィリアムのようで。

なんだか感動と同時に彼女らをとりまく大人達に憎悪すら抱いてしまい、最終的にはそれを本人に否定されるという・・・すげぇ体験をしてしまいました。


続いてのシーンはチーム4という新たに結成されたAKB内のチームの物語。
チームのキャプテンは島田さんであろうという周囲の予想に反して大場さんに決まる。
しかし、大場さんは過去の彼氏とのプリクラ写真流出によって、謹慎。島田さんが代行キャプテンとなる。
しばらくして謹慎がとけて大場さんがチームに戻ってきて・・・

島田さんとしては多少不本意な形だろうけど、念願のキャプテン。
しかし、大場さんが戻ってくることによってキャプテンは下ろされてしまう。
大場さんには戻ってきて欲しいけどキャプテンは譲りたくない・・・

他のメンバーとしてもチームの評判を落とし、大いに迷惑をかけた大場さんが帰ってくることに対して不穏な雰囲気が漂う。

なんじゃこりゃ!!!残酷過ぎる!!!でもおもしろ過ぎる!!!
そして、結果としてアイドルの恋愛問題というその踏み込むか?って場所に片足をつっこむことになる。
・・・なんつー映画だ。

ただ、その問題についてはあくまで片足をまでに止めている。
が、他の問題に対して踏み込みすぎているんですが・・・



最後。もう一度慰問ライブシーンで終わる。
一連の流れを見ているの冒頭の慰問ライブとはまるで見え方が違ってくる。
彼女たちの笑顔には、そして観客に笑顔を与えるに至るには、それまでにとんでもない努力と苦痛が重ねられていたのだ。

もう、号泣。
涙と鼻水で顔中がぐちゃぐちゃ。


AKB48メンバー全員に最大限の賛辞と尊敬を。
ファンを含むAKB48を取り巻く大人たちには憤怒と軽蔑を。

『少女達は傷つきながら夢を見る』って傷つけてるのはお前ら大人だろ!!
主催者達だろ!!ファン達だろ!!!

でも、そんな俺みたいな外側からの怒りは高橋さんの「走れ!」一言で否定されちゃってるし・・・
やっぱり、俺はこれ以上アイドルってものには踏み込まないようにしよう。そう思うには十分過ぎる作品でした。

今後もCDやグッズ買ったり、ライブ行ったりはしないだろう。
積極的に名前覚えたりはしないだろう。
でも、安易に底が浅いAKB批判をするやつは俺が揺るさん!!ってくらいには思い入れてしまいました。




最後に。
この映画があえて踏み込んでいない部分について(と言いつつも片足くらいは突っ込んでたけど)

まず、商業的な面。
俗にAKB商法と言われてるアレ。
握手券や選挙券、そのたグッズを手に入れるために大量に同じものを買い込むオタクたち。
これは全く持って健全じゃない。
これははっきりと良くないと断言します。

もう一点。アイドルの恋愛問題。
アイドルっていう性質上、架空恋人としての需要は無視できない。
だからこそ水着で写真を撮る。
そうなってくるとやっぱり恋愛禁止はつきものだ。
でもさ・・・彼女らだって人間じゃねーの?
アイドルや芸能人であるまえに10代20代の女の子だろ?
アイドルの恋愛に怒るっていうのは昭和のアイドルに付きまとった「アイドルはトイレ行かない」にみたいな気持ち悪さがある。

人間なんだから怒ったり辛かったり苦しかったりする。
人間なんだからトイレ行くし、人を好きになるだろうし、セックスだってするだろう。
いいじゃん。認めてやれば。
テメーがファンになった相手の恋愛なんだから祝福してやりゃーいいじゃん。
CD割ったり写真破いたり悪質な書き込みしたり・・・くだらない。
って、この問題は受け取り側の問題な気もするけど。



ただ、この2点に踏み込んだときってのはアイドル、というかエンターテイメントの1つの到着点であり終焉であろうと思う。
なんだか怖いけど、ここまでの映画が作られたってことはその日は近い気がしている。




ああ!今回、全然まとまってない!!そして語り足りない!!
言いたいことの1/10も語れてなーーーーい!!!

V.S. ALWAYS 三丁目の夕日

映画館に通っては『ALWAYS 三丁目の夕日'64』のスクリーンに吸い込まれていく大量の人々を観ては苦虫を噛み潰す日々。
畜生、シリーズ物のくせして何作目かわかりにくいタイトルつけやがって。もう64本も撮ったのかよ。

最近なぜかだ俺の周りのこの映画の話題が多い。
「映画好きなんでしょ?ALWAYS観た?あれ、チョー泣けるよねー」ってテンションで。
ごめんなさい、俺、あの映画チョー苦手なんです。
その度俺なりの考えを述べてるんだけど、それがまぁぼんやりしている。
いかんせん、観たのが結構前なもんで、観終わったあと激怒のあまりディスクを割らないように苦労したことしか覚えてなくて・・・
これではせっかく映画の話題を振ってくれた相手にも作品そのものにも失礼だ!ってことで、調べました。考えました。

同監督の別作品、テーマが似てる作品、時代が似てる作品も観た。
関連する映画評論本や公開当時の映画雑誌も出来る限り集めてみた。
図書館で舞台となる時代についての資料を読んで、時代背景も調べた。
ブログやレビューサイトも一通りチェック済み。
完・全・武・装!


さぁかかってこい!ってことで本編観ました。3回ほど。

で、以下、結論。
ちなみにALWAYS好きな人が読むと不快になるおそれが多いにあるので注意。
ただ、資料とか読み込んで、仕事の時間中もずっと色々考えて出した結論。
なにかについて色々調べて考えて、結論をまとめることの楽しさを再認識できたことは大きな収穫でした。


大きく分けて3つの段落で結論を。
1,演出 〜うっせーんだよ!〜
2,ストーリーとディティール 〜それは王道じゃなくて陳腐と言う〜
3,作品テーマ 〜コイツらこそイエスタデイ・ワンスモアじゃないか!〜



1,演出 〜うっせーんだよ!〜

まずは映画としての技術面。これについては個人の感覚とか関係ないし、とりあえず明らかな部分なんで。

本作品を監督した山崎監督の演出は一言に尽きる。
「うっせーんだよ!!!!」
とにかく演出がうるさい。どこがうるさいか。

まず、音楽。
これは物理的にも精神的にもうるさい。
この監督はそれっぽいシーンでそれっぽい音楽を大音量でかければそれでいいと思っているらしい。
悲しげなシーンでは悲しい風な音楽をドジャーンって流す。
楽しげなシーンでは楽しい風な音楽をなにも考えずに流す。
イーストウッド黒沢清みたいに音楽を抑えたり全く使わなかったりして緊張感を高めてからの・・・エモーショナルの爆発!みたいな演出はしない。
これじゃあ、全く物語に入り込むことができない。
それはまるで、とりあえず調味料をかけただけの料理のようだ。
下ごしらえとか出汁とかめんどくさいから、とりあえずお湯に味噌溶かしましたって言われて茶色いお湯を出されても、俺はそれを味噌汁とは認めない。

次にカメラワーク。
山崎監督はとりあえずクレーンやレールを使わないと壮大な画やスピード感がある画は撮れないと信じているらしい。
やたらと無意味に派手なカメラワークを使う。
カメラを振り回す前にもっとやることがあるでしょうに。
よく考えて欲しい。
アイアンマンや北野武座頭市ではどこをFIXで撮っていたのか、どこでクレーンやレールを使っていたのか。
ちなみにCGの使い所も・・・どこをCGを使ってどうやって実写に繋げると効果的か、なんにも考えていないのが丸見えなのだ。
この監督にとってはカメラワークもCGもドヤ顔するためと出演者の演技力不足を補う為の道具でしかないらしい。
誤魔化してるんじゃねーよ!

最後に台詞回し。
これがとにかく最悪。
超説明的。すべてが説明的。
山崎監督はとにかくすべてを台詞で説明しないと気が済まない。
リアリティ無視で、そんなこと言うか?って台詞がただただ並ぶ。
目をつぶっていてもなにが起きてるのか全部把握できる。それくらい説明的。
完全に観客を馬鹿にしているとしか思えない。これくらい言ってやらないとお前らにはわかんないだろ?って。

例えば淳之介の父親が「三流品は持つな。これからは一流品を持て」っていって万年筆を茶川に返す。
本当にうっさい。そんなもん、万年筆を捨てるシーン入れとけばわかるっての。
この淳之介の父親がらみのシーンは本当にひどくって、とにかく全部台詞でいう。
んなもん、観てればわかるってんだよ!!って感が常にまとわりつく。

他にも駄菓子屋を見て「あらやだ、本当に小さい」って驚いたり(わざわざ自分がなにに驚いてるか説明してくれなくてもいいよ!前振りもあったしわかってるよ!)
「お守り入れておいたわよ」って伏線をわざわざナレーションで説明してくれたり(うっせーんだよ!わかってるよ!!その伏線、ほんの少し前じゃねぇかよ!!てかこんなもん伏線って認めねーぞ!!!)

とにかく本当にすべて台詞で説明される。
あのさ、映画の意味ってわかってる?映像なんだよ?
ちょっとした表情やふとした動作で感情を表現することができるのが映画の素晴らしいところじゃないの?そこが映画だからこそできる表現なんじゃないの?
それを全部言葉で説明されても・・・


以上の3点がもっとも顕著になるのは茶川と淳之介の別れのシーン。
延々と冗長な別れへと至るシーンを重ねた挙げ句、泣いてる子供の映像の上にその子供が書いた手紙の文面を写して、その上その文を読ませる。そして流れる大音量の悲しげな音楽・・・
もう、阿呆じゃねーのか・・・説明的にもほどがある。冗長にもほどがある。
うるさい。本当にうるさい。完全に馬鹿にしてやがる。
1ミリも感動なんてできやしない。激怒するしかない。

これらの超過剰説明演出のせいでまるで映画観てる隣で事細かに解説されてるような感覚に陥る。
「はい!ここ、笑うところね!笑って!はい笑って!・・・はい、ストップ!笑うとこ終わり!次来るよ〜次。次は感動する場所だよー?泣く準備してー?ちょっと待って・・・はい!ここ!泣いて!泣いて!じゃんじゃん泣いて」
・・・もう、うっせーんだよ!!




2,ストーリーとディティール 〜それは王道じゃなくて陳腐と言う〜

よくレビューで「これは良くある王道ストーリーだから意外性はないんだけど、それが逆に良くて〜」みたいなの見るけど・・・
これは王道じゃなくて陳腐なだけだと言いたい。

まず細かいディテールが全然練られてない。
芥川賞を目指す作家の名前が茶川竜之介って・・・そんなもん、審査通るわけねーだろーがよ!!馬鹿にしてんのか!!
それに、貧乏なはずの鈴木オートがあっという間に三種の神器の家電を揃えちゃったり。いや、金あるじゃん。それじゃあ最後の切符とか全然感動的じゃないんですが・・・
自転車と自動車を間違えて採用ってのも・・・どっちにしろあの時代の自動車修理業が技術員として女の子雇うか・・・?
あとさ、昭和30年代をリアルに再現してるっていうけど・・・本当にそうか?
当時の写真とか見る限り、もっと町並みは汚くないかなぁ・・・子供達の服装もなんだか小綺麗過ぎるし。
てか昭和30年代って50〜60年前だよ?懐かしいとかリアルだとか・・・誰が言ってるの?60代以降のジジババ様たちじゃなきゃ言えない台詞だろ?
つまりはこの映画内にあるのはあくまで懐かしい風だけなのだ。
これについては次項で詳しく。

ストーリーもなんだかなぁ。
色々言いたいことあるけど、とにかく俺がいやなのは登場人物が誰一人として頑張ったり努力したりしないこと。
何気ない日常的なものを撮りたかったかなんだか知らないけど、なにも起きなすぎじゃん。俺らの日常の方がよっぽどドラマチックだよ。
六子が自動車について勉強する描写もなければ茶川がいい作品を書こうと真剣に苦悩する描写もない。
ロシア文学も読んだことないくせに」って台詞があるけど・・・あのさ、君が本当にロシア文学ちゃんと読んでたら彼らがどれだけの苦悩の挙げ句に執筆してるか理解してるんじゃねーの?それもわかってないなら純文学なんて書く資格ないでしょう。

最悪なのは茶川の盗作問題。なんかさ、いい話風に撮ってるけど・・・その行為は最低だからな!
なんらかの罰を受けるべきじゃないのか!?せめて物語内でなんらかの決着をつけるべきじゃないのか?いいのか?それで。

物語内には敵も問題も全く存在しない。
あったとしても勘違いだったり、超簡単にクリアできてしまったり。
乗り越えるべき障害がなきゃ、そりゃ努力もしないか。
・・・本当に人生ってそんなんか?



3,作品テーマ 〜コイツらこそイエスタデイ・ワンスモアじゃないか!〜
この作品の舞台は昭和33年だ。
終戦から10年ちょっとしか経っていない。
高度成長期真っ直中。日本の強欲の時代だ。
そんな時代をリアルに再現したというが・・・これがリアルなわけないだろう!そんなこと、その時代に生きてない俺にだってわかる。
1950年代といえば、わかりやすく言えば『はだしのゲン』の後半の世界だ。
・・・それがあんなに綺麗な町並みであってたまるかってんだ!!

図書館やなんかで当時の資料を見て欲しい。
園子温が監督したんじゃねーの?って猟奇的な殺人事件が山ほど起きてる。しかも最近流行の犯罪の低年齢化をあざ笑うように犯人は子供といって良いほど若い。
さらに高度成長に伴って日本がどんどん汚れていくのもこの時代だ。
日本四大公害水俣病はちょうとALWAYSの頃に起きてる。
出稼ぎに田舎から上京してきた人達だって、鈴木オートのような心優しい雇い主に恵まれることなんて稀で、過酷な労働や酷いイジメを受けて体を崩す人が続出していた。
人と人のと繋がりがどうとか温かみがどうとか言うけど、この頃はまだ隣組の風潮も残っていてプライバシーなんてものはなく世間体をとにかく気にしなければ生きていけなかったなんて文献もある。
欧米に追いつけ追い越せで無理矢理な成長をした結果の歪みが見え始めた時代といえるだろう。

では、ALWAYSではこれらの負の部分についてどうやって描き、どのように解答を出しているか。
・・・答えはスルーだ。完全スルー。
一切描いていない。完全に逃げてる。

ここで描かれている昭和は思い出博物館でしかない。
汚いものや敵や問題はすべて取り除かれた漂白された世界。
とにかく徹底して汚いものは映さない。
どれだけ徹底してるかと言えば、お腹を壊した六子が吐くシーンがあるんだけど、顔は画面からフレームアウトする。
ふっざけてんじゃねーよ!!美少女のゲロ映さないでどうすんだよ!!映画なんて美少女のゲロ見る為に観に行ってるにキマってんだろ!!その点『ピラニア3D』は偉かったよな!美少女のゲロが3Dで飛び出してくるんだもんな!

論点がズレました。

漂白された世界。それはテーマパークのようだ。
・・・ん?昭和のテーマパーク?
これはまさに『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』に出てきた秘密結社イエスタデイ・ワンスモアそのものじゃないか!

現在を、未来を否定し、昔自分が憧れた虚構の未来を盲信する。
それゆえ過去を見つめてるだけで、そこから先に勧めない。
つまり、この映画は「昔は良かったねぇ。まったく最近の若いのは・・・」っていうおっさんのぼやきでしかないのだ。

本当に腹立たしい!!
ふっざけてるんじゃねーぞ!!
今が昔に劣ってるで誰が決めた!!
俺は楽しい!!今が超絶楽しい!!勝手に決めつけてるんじゃねーぞ!!!過去を美化してるんじゃねーぞ!!!
そもそも現代を作ったのはテメーら大人じゃねーかよ!!自分達で作っておいて勝手にダメだって決めつけてるんじゃねーよ!!!!
(以下略)

そんな腐りきった根性がキャッチフレーズにも如実に表れてます。
「携帯もテレビもパソコンもなかったのに、どうしてあんなに楽しかったのだろう。」
ばっかじゃねーの。そんなこともわかんねーの?
それは携帯もテレビもパソコンもなかったからだよ。そういう文化がなかったからだよ、ばーか。
時代が違うのにそんなもの比べるだなんてナンセンスにもほどがある。
ことほどさように、ほとばしってくる「あの頃は良かった」的な懐古趣味には虫唾が走る。気色悪い。気持ち悪い。



よくよく考えて欲しい。
オトナ帝国で野原一家がなにを主張していたか。

確かに過去は良かったかもしれない。でも辛いことだらけの現在だって十分幸せだ。そして、もしかしたら未来はもっと楽しくてもっと幸せかもしれない!
しんちゃんはそうやってイエスタデイ・ワンスモアを必死で止めてくれたじゃないか。
ALWAYSにハマってる人達はオトナ帝国の前半で懐かしさに囚われてしまったヒロシやミサエと同じなんだぜ?

よく考えて欲しい。
なぜ、『オトナ帝国』でしんちゃんが必死で階段を駆け昇ったのか。
なぜ、『バトル・ロワイヤル』で川田はキタノを殺したのか。
なぜ、『卒業』でベンジャミンはエレーンを攫ったのか。
なぜ、『イージー・ライダー』でビリーとワイアットはバイクを飛ばしていたのか。

それは未来を掴みとるためだ。
それは大人達への鋭いカウンターパンチだ。
これらの映画には既存の体制をぶち壊し、もっと素晴らしいなにかを作り上げてくれという大人達から次の世代への前向きなメッセージが込められている。

それなのに未来も現在も否定して、漂白された過去だけを見ている『ALWAYS 三丁目の夕日』という作品を俺はどうしても好きになれない。


『オトナ帝国』の冒頭、20世博というテーマパークにハマる大人達を見て、風間君がつぶやく。
「懐かしいってそんなにいいものなのかな」